ココロに効く本棚
ポケット版「のび太」という生きかた
From:池田慎哉
横山泰行 著 / アスコム 864円
~内容紹介(出版社HPより)~
勉強も運動も苦手でぐうたらしてばかりののび太。
でも、映画版で大活躍し、
しずかちゃんとの結婚と
実は人生の成功者だったのです!
そんなのび太から、
無理せずに自分らしく生きて
夢まで叶えてしまう方法を学んでみませんか?
著者はのび太の成功法則を「のび太メソッド」と提唱。
本書では全部で37つ紹介しています。
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ドラえもんとのび太の関係を今までは教訓だと思っていました。
甘やかしていてはいつまでも成長できない。
のび太のようになってはいけないと。
ところが本書を読んでビックリ。
藤子先生にお詫びしたい気持ちです。
国民的漫画『ドラえもん』は、
子ども達の成長にとって素晴らしいテキストだと知りました。
ストーリーが面白いから見落としがちだったのでしょう。
著者の研究によって
漫画が伝える素晴らしいメッセージに光が当たりました。
道具に頼るばかりというのも私の思い込み。
ひみつ道具は自分の良いところを伸ばしたり、
ちょっと足りない何かを後押ししたり。
のび太の良さを引き出す道具としても描かれています。
「のび太の結婚前夜」では、
しずかちゃんのパパがのび太くんを信じるようにと言います。
そこに続くのは『ドラえもん』史上最も心に響く言葉。
「あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ」
のび太くんのような生き方が、
実は自分と他人を幸せにしてくれるのかもしれない。
そう教えてくれる一冊です。
(池田)
世界を変えた100人の女の子の物語
From:池田慎哉
エレナ・ファヴィッリ、フランチェスカ・カヴァッロ 著
芹澤 恵、高里 ひろ 訳 / 河出書房新社 2,592円
~内容紹介(出版社HPより)~
Rebel Girl〈反骨心を持った、勇敢な女の子〉。
世界各国で活躍した100人の女性の物語を
美しい肖像画と共に紹介。
世界を席巻したとびっきりの
ポジティブストーリーが日本上陸!
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男女の差異や平等が求められる時代。
小さい頃から男女のあり方について学ぶ機会も多くなっています。
陽光学院で子ども達と接してきて、
性差による勉強面への影響を感じることがあります。
お子さんに対する保護者の方の悩みや不安も、
男女によって傾向があるのも事実。
性別を意識せず伸び伸び育てたい反面、
性差を考えて接するべき場面もありそうです。
ただ1つ強く思うのは、
何かに挑戦するという点でまだまだ女の子は機会が少ないということ。
女の子だからムリをしなくていい
という風潮は根強いものがあります。
それでもめいっぱい頑張る経験をすれば、
もっと能力を発揮できる子も少なくないはずです。
本書は女の子に勇気を与える物語が詰まっています。
ぜひお気に入りの話を探してほしいですね。
自分のチカラを信じてめいっぱい挑戦した人々の話ですから、
男の子が読むのも良し。
文章と人物画が対になる構成で、
絵のタッチも多様なので見ているだけで楽しいのも良いです。
興味深い話が読みやすくまとまっており、
良質な読書体験という意味でもオススメの一冊です。
(池田)
AI vs.教科書が読めない子どもたち
From:池田慎哉
元村有希子著 / 毎日新聞出版 1,620円
~内容紹介(本書表紙裏より)~
大規模な調査の結果わかった驚愕の実態
――日本の中高校生の多くは、
中学校の教科書の文章を正確に理解できない。
多くの仕事がAIに代替される将来、
読解力のない人間は失業するしかない……。
気鋭の数学者が導き出した
最悪のシナリオと教育への提言。
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全国25,000人に実施した基礎的読解力テスト。
これが出題されたうちの1問です。
『「Alexは男性にも女性にも使われる名前で、
女性の名Alexandraの愛称であるが、
男性の名Alexanderの愛称でもある。」
この文脈において、
以下の文の空欄にあてはまる
最も適当なものを選択肢から1つ選びなさい。
「Alexandraの愛称は( )である。」
①Alex ②Alexander ③男性 ④女性』
中学生の正答率は38%、高校生の正答率は65%でした。
このテストの出題者は国語の先生ではなく、
実はAI(人工知能)の専門家である著者の新井紀子さん。
ロボットが東大合格を目指すプロジェクトから派生して
大学生数学基本調査、次いで今回の読解力調査と、
日本の教育に切り込んでいます。
教育の現場では「文章をよく読んでいない」
というフレーズをよく使いますが、
まさにそれを裏付ける結果です。
係り受けや指示代名詞の認識不足で、
子ども達が教科書の短い説明ですら理解できていない
という指摘は事実でしょう。
教育に携わる者として、
こういった研究を現場で活かしてほしいですね。
AIの歴史や未来についても学べる本です。
(池田)
科学のミカタ
From:池田慎哉
元村有希子著 / 毎日新聞出版 1,620円
~内容紹介(出版社HPより)~
自然現象や環境問題、宇宙や医療、
生物、物理、化学など
私たちは日々、最先端研究から日常の科学の話題に触れている。
だが、どう受け止め、
どう理解すれば安心して暮らせるのだろうか。
知ってるようで知らないこと、
知らないと困る科学の話を『理系思考』や『気になる科学』など、
文系人にもわかりやすく、
解説することで定評のある著者が解説。
好評科学エッセイ最新刊!
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小学生の頃にやってみたかった習い事が理科の実験教室。
白衣を着て実験する姿に憧れがあったのでしょう。
習い事の希望はかなわず、
学年が上がるにつれ科学の面白さより
勉強としての理科に興味が薄れていったのを覚えています。
科学の世界は、驚きや発見に満ちて楽しい世界だったはずなのに。
今、教室で小学生が理科を勉強する様子をみていて感じるのは
リアリティがないこと。
かれらにとっては身近なはずの理科でさえも
遠い世界のようになっています。
「クジラの足は何本ですか?」
そう真顔で質問した生徒は
頑張って理科を得意科目にしたのだけれど、
そもそも理科への興味が薄いことが残念です。
面白いことが多い時代だからこそ、
もっと積極的に理科の世界を伝えていかないと
子ども達には届きません。
ニホニウムやチバニアン、そしてAIなど、
本書は入試の時事問題に出そうなテーマが
ニュース記事よりも深く掘り下げられています。
ただ一つの注意点が子ども向けではないので、
スラスラ読めるとは言い難いところ。
ですが内容は◎。
高学年の生徒にはぜひトライしてみてほしいですね。
(池田)
江國香織童話集
From:池田慎哉
江國香織著 / 理論社 1,728円
~内容紹介(出版社HPより)~
作家江國香織のデビュー作
『つめたいよるに』に収められた名作
「桃子」「鬼ばばあ」「草之丞の話」はじめ
20代に次々発表した短編童話30余を網羅した作品集。
生きていく困難さは子どもも大人も変わらない。
ピュアな視点で世界をまっすぐ見つめる子らの生きざまを
美しい言葉で綴る。
「モンテロッソのピンクの壁」
「あかるい箱」
などの絵本に書き下ろされた作品も文章のみで。
唯一21世紀に入ってからの作品「おさんぽ」も併録。
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先月、『魔女の宅急便』の作者である角野栄子さんが
国際アンデルセン賞を受賞しました。
児童文学の名作は子どもも大人も楽しませてくれます。
中学受験の指導を通して感じるのは、
入試出題文の素晴らしさ。
森絵都、重松清、辻村深月、小川洋子など人気作家が多く、
読み易くてかつ深い内容のものばかり。
優しさや強さ、友情など、
子どもに伝えたいと思うような教育効果のある文章が多いのです。
これらの作品が良いのは、
子どもにとって少し背伸びした大人の世界に
いち早く触れられるということ。
親が話すのは少し気が引けるような内容もありますが、
成長の過程でいずれは知るべきことです。
大人の世界の苦みをサラリと描いている作品もあります。
インタ−ネットの世界から知るより、
小説を読んで心が成長する方が親の立場でも安心でしょう。
小学校の高学年なら最初は短編集がお勧め。
今回ご紹介の江國香織さんの童話集は少し大人びた世界です。
あまり本を読まない子も面白いと思える一編に出会ってほしいですね。
(池田)
友情~平尾誠二と山中伸弥「最後の1年」~
From:池田慎哉
山中伸弥、平尾誠二・惠子著 / 講談社 1,404円
~内容紹介(出版社HPより:抜粋)~
2010年、雑誌の対談で初めて出会った二人は急速に仲良くなり、
やがて親友と呼べる関係になった。(略)
友・平尾誠二に癌が宣告される。
山中伸弥は医師として治療法や病院探しに奔走。
体調は一進一退を繰り返すが、
どんなときも平尾は「先生を信じると決めたんや」と語る。
そして、永遠の別れ。
山中は「助けてあげられなくてごめんなさい」と涙を流した。
大人の男たちの間に生まれた、
知られざる友情の物語。
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文系と理系、文化部と運動部は
物事の考え方が異なるイメージです。
自分はどちらのタイプかと考えたことが
誰にでもありますよね。
適性という言葉もありますが、
なにより好きな事を選ぶのが一番。
中学での部活動や高校での文理の進路など
好きな事を選べば頑張れます。
しかし、問題点も。
日本は文系と理系の分かれ道が早過ぎることや、
ハッキリと線引きされ過ぎていることが指摘されています。
最近は、文理の区別がない学問領域が増えてきました。
むしろ様々な分野から刺激を受けることはよくあります。
本書はラグビー界の英雄である平尾さんと、
ノーベル賞の山中先生の異色の組み合わせの交遊録。
お互いに刺激を受ける親友だったそうです。
前半は平尾さんの闘病記で、
癌という病気の壮絶さが伝わります。
亡くなられて2年、
ラグビーと言えば平尾さんを思い浮かべる方は多いでしょう。
後半はお2人の対談集。
一流を極めた人の言葉は面白く思考も柔軟です。
平尾さんの人を叱るときの四つの心得は
「後でフォロー、人格は責めない、
長時間叱らない、他人と比較しない」。
元日本代表監督らしい育成法ですね。
(池田)
注文をまちがえる料理店
From:池田慎哉
小国 士朗著 / あさ出版 1,512円
~内容紹介(表紙より)~
忘れちゃったけど
まちがえちゃったけど まあいいか
まちがえることを受け入れて
まちがえることを一緒に楽しむ
「認知症を抱える人」が接客をする
不思議であたたかいレストランのものがたり
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お店などでちょっとしたトラブルを被っても、
たいていは気持ち良く対応するのですが、
それでも自分が注文を間違えられるのは
気持ちのいいことではありませんよね。
面白いタイトルとカバーデザインに惹かれて、
手に取った本書。
最初の数ページを読んで思うのです。
「あぁそうか、間違えたっていいって店なら何も不愉快じゃない」と。
逆転の発想、スゴいアイデアですね。
認知症の人たちが働くお店で、
間違えた料理を受け入れる。
それは、すごく正しいことに思えます。
お金を払う価値が
料理やサービスだけに向いているわけではないからでしょう。
イキイキと働く姿や温かい雰囲気のお裾分けに価値を見いだす。
そんなレストランなのかもしれません。
認知症という身近にある問題、
日本人の寛容さという大きなテーマと
期間限定レストラン「注文を間違える料理店」プロジェクトを進める
エネルギーや方法論がそれぞれ興味深い一冊です。
世界中から注目を浴びた新しいお店の誕生は
新たな価値観やライフスタイルを予感させるものでした。
このお店、行きたいです!
(池田)
犬が伝えたかったこと
From:池田慎哉
三浦健太 著 / サンクチュアリ出版 1,274円
~内容紹介(出版社HPより)~
犬を見つめ、犬に寄り添い続けた
熟練ドッグカウンセラー・三浦健太氏が贈る
実話をもとにした、20の心温まる犬の話。
「本当の幸せとは?」「今の私がある理由とは?」
犬たちが教えてくれた大切なことを
家庭や仕事に問題を抱えたさまざま人の心の成長を通して、
やさしく伝えてくれます。
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子どもの頃、犬を飼っていました。
小学生になるまで
一人で散歩に連れて行くのは禁止だったのですが、
残念ながら私が小学生になる前に
亡くなってしまいました。
私のあまりの悲しみようを見て、
それからは動物を飼ってもらえないまま。
大人になったら自分で飼いたいと思っていたのですが、
いまだに実現していません。
その代わり動物園や水族館は大好き。
自然に生きる野生動物のドキュメンタリーも好きです。
でも動物を飼うことは、
また違った経験なのでしょう。
本書に出てくる犬は家族の一員ですが、
それだけではありません。
言葉が通じないからこそ、
犬が伝えたかった気持ちを分かったときの飼い主たちは
動揺したり感動したり。
時には大きなメッセージを受け取る事も。
そんな愛情の詰まった20匹の犬と飼い主たちの物語です。
特に交番のお巡りさんと
動物看護士さんの話が印象に残っています。
犬を飼っている人も、そうでない人も
心に響くエピソードがきっとある。
そんな一冊です。
(池田)
こども君主論~きびしい社会を生き抜く人になる!~
From:池田慎哉
齋藤孝:監修 / 日本図書センター 1,620円
~内容紹介(出版社HPより一部抜粋)~
たとえばこんなヒントが!
●やさしさときびしさは、バランスがたいせつ。
愛されながら、恐れられる存在になろう。
●こころに不安があったり、自分に自信がなかったりすると、
乱暴な人になってしまうよ。
●新しい自分になりたいなら、
「いつもどおり」を捨てる覚悟だって必要だよ。
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「努力に勝る天才はナシ!」
と宿題チェック用紙に大きな字で書いてありました。
それを書いた生徒は、今も同じように書き込んでいます。
初めて見た時はビックリ、そして嬉しくもなりました。
私も同じような経験があったからです。
どこかで聞いた言葉を中学の学生証に、
こっそりと書き込んだ覚えがあります。
気恥ずかしい気持ちもありましたが、
その言葉に感銘を受けたのでしょう。
懐かしい思い出です。
言葉に影響を受けることが誰でもあるものでしょう。
映画や漫画のセリフや小説の一節を今でも覚えている人も多いのでは。
言葉が気持ちを変えてくれたり、
志を強くしたり。
特に成長期にはたくさんの優れた言葉、
メッセージに触れてほしいものです。
今から500年前に書かれたマキャベリの君主論は
「君主=リーダーはどうあるべきか」
をまとめた本ですが、
『こども君主論』は全ての子どもに読んでほしい内容に編集されています。
勇気や信頼についてなどの24個のメッセージ。
4年生くらいなら一人で読み進められます。
どれもわが子に贈りたい言葉です。
(池田)
漫画 君たちはどう生きるか
From:池田慎哉
吉野源三郎:原作、羽賀翔一:画 / マガジンハウス 1,404円
人間としてあるべき姿を求め続けるコペル君と叔父さんの物語。
出版後80年経った今も輝き続ける歴史的名著が、初のマンガ化!
勇気、いじめ、貧困、格差、教養、、、
昔も今も変わらない人生のテーマに
真摯に向き合う主人公のコペル君と叔父さん。
二人の姿勢には生き方の指針となる言葉が数多く示されています。
初めて読む人はもちろん、何度か読んだことのある人も、
一度手にとって、人生を見つめ直すきっかけにしてほしい一冊です。
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人生に影響を与えてくれる人との出会いは大切です。
私は中学の数学の先生が忘れられません。
武勇伝がいくつもある厳しい先生でしたが、
私が出会った頃はもうご高齢。
普段は好々爺のような先生が時折、
生徒の卑怯な振る舞いや不正に激怒していました。
先生の言葉に影響を受けただけでなく、
私たちを子供扱いしない接し方も嬉しかったです。
大人の世界に導いてくれた人でした。
本書の主人公は叔父さんに導かれて成長していきます。
舞台は1937年の東京。
コペル君と呼ばれる中学生が、
友達を裏切ることの心苦しさに悩むところから始まります。
学校での出来事と叔父さんとの対話によってコペル君は、
どう生きるかを考えます。
叔父さんの言葉が彼の胸に強く響きます。
「人間は自分で自分を決定する力をもっている」
「後悔を変えることはできない、悩むのは一旦止めて、
今なにができるかを考えてごらん」
そのような言葉を聞くたびに、自分で考え始めるコペル君。
本書は吉野源三郎さんの本を漫画化したもの。
ノスタルジックな描写の漫画で、
昭和という時代を知るのにも良い作品です。
(池田)